役員等の勤続年数が5年以下である人は退職金の2分の1課税の適用はなし
横浜市青葉区の税理士、古嶋(フルシマ)です。
退職所得の計算方法
退職所得の金額は、原則として、次のように計算します。
(収入金額(源泉徴収される前の金額)-退職所得控除額)×1/2=退職所得の金額
この退職金課税(住民税も含む)の特徴、あるいは節税効果があると喧伝される理由は、勤続年数に応じた退職所得控除額(勤続年数20年まで年40万円、20年超年70万円)が大きいという点もありますが、何といっても退職所得の金額(課税標準額)が、退職金(退職所得控除後の金額)の「2分の1」である、という点です。
退職所得の金額を具体例で算出すると、次のようになります。
例)退職金の額:2,000万円、勤続年数:25年
(退職金の額「2,000万円」-退職所得控除額「1,150万円」)×1/2=退職所得の金額「425万円」
※退職所得控除額1,150万円=20年×40万円+(25年-20年)×70万円
役員等の勤続年数が5年以下の場合
この退職金に対する2分の1課税は、一部外国人役員の給与等の節税に利用され、また、特権を持った一部の人が退職後、外郭団体で役員等に就任しては、短い期間で退職し、その都度、退職金の支給を受ける、いわゆる「渡り」と呼ばれる人が、退職の都度、この適用を受けていました。
現行の2分の1課税方式は、超過累進税率の適用を緩和するためのもので、こういった特殊な事例で適用されることは想定されておらず、本旨に反するとの批判が高まり、平成24年度の税制改正で、役員等に就任し、その勤続年数が5年以下の当該役員等の期間に対する退職金については、2分の1課税は適用しない、旨の改正がなされ、平成25年1月1日以後の支給分から適用となっています。
※「役員等」とは次の1.~3.に掲げる人をいいます。
1. 法人の取締役、執行役、会計参与、監査役、理事及び清算人並びにこれら以外の者で法人の経営に従事している一定の者
2. 国会議員及び地方公共団体の議会の議員
3. 国家公務員及び地方公務員
2分の1課税の適用除外は全ての法人等に適用
この2分の1課税適用除外ですが、中小法人であっても適用され、当然に使用人から兼務役員になった役員期間も対象です。
中小法人では、よく、定年前に使用人から兼務役員、場合によっては、さらに本役員(常務等)に昇格、そして、5年以下で退職してもらう、という事例はままあります。この場合ですが、役員等の勤続期間が5年以下ですので、役員としての退職金には2分の1課税の適用はありません。留意が必要かと思われます。
対策としては、5年超勤続させるか、それができない場合には、役員期間の退職金を合理的に算定し、できる限り少なくするか、です。少なくとも、見栄で役員部分の退職金を多くすることは禁物です。
なお、使用人部分の退職金は、勤続期間の有無にかかわらず、2分の1課税は適用されます。